2025/06/18 00:34
『口紅から機関車まで』レイモンド・ローウィー
『神話の力』ジョーゼフ・キャンベル ビル・モイヤーズ
「編集学校 師範代のレクチャーで学べること」
「デザイナーの自己満足」的な言葉を見かけることがある。その人の仕事や人柄を尊敬していても、「新しいものの誘惑と未知のものに対する恐れの臨界点(レイモンド・ローウィー)」から後ずさりする人々はいる。自己満足に写ることをローウィー氏は計算していた。評価基準がまだない事柄では、クライアントが何を求めているかインタビューする力もデザインの仕事に含まれる。ただし相手が説明できる言葉を持っているとは限らない。
ひらたく言って『口紅から機関車まで』の最後にローウィー氏は、おばあさんが中央分離帯でウロウロしていても、手を引いて道を渡らせるべきかどうかは難しい旨書いている。
ローウィー氏は本の中で、有名なタバコのパッケージデザインを提案するとき、出来上がりをクライアントが納得してない様子をさとり、本人にデザインパーツを渡して、部屋を貸す。何時間も経った後、クライアント本人が自分でレイアウトし納得したのは、最初に提案されたデザインと同じものだった。クライアントには納得の時間が必要だったのである。
新しい提案には、相手に納得させる、学習してもらう、評価の軸を作る等の内容が発生する。
「なにか食べたいものある?」と家族に聞いても「何でもいいよ」と返ってくる。しかし「鶏モモあるけど、①カレー②唐揚げ③筑前煮のどれがいい?」と聞くと「カレー」等と返事が返ってくる。選べるようにする技術は広告代理店に任せておいて(3つからなら選びやすいとか)…
話はもどるが、道を渡らせるべきかどうかはキャンベル先生がよく書く川を渡る心理にも通じる問題で、キャンベル先生の好き嫌いは抜きにして講義内容は示唆に富む。『神話の力』の中盤で、運命の輪の中央軸につかまる事を勧める。
キャンベル先生は直感によってそれを選択すること勧めるが、私達クリエイターは、その軸自体を作ることが仕事。
それは物事の評価軸でもあり、それは編集学校の師範代になると学べる。
評価の軸は、評価の言葉で出来ている。千夜千冊ではマイルス・デイヴィスを引いて評価の言葉「クール」を解説している。
ここからは蛇足だが、日本メーカーの操作キーやインターフェイスは、「迷わせない設定」がとても巧くて、迷う可能性のある操作を、徹底的に排除している。引き算の設計。関連して特許の本など読むのも面白い。グローバルになって他の製品を使うようになると、操作性やインターフェイスの不親切さに戸惑うことがある。
そちらはそちらで話題と課題があり、言葉で表記するのか、記号で表記するのかなどの問題もある。
